☆ サンレモ音楽祭 (FESTIVAL DI SANREMO)

地中海に面するイタリア西リヴィエラ海岸最大のリゾート地である、サ ンレモ。この人口約56000人の小さな街は、この時期になると倍以 上に人口が増え、今、イタリアで一番注目されている街と言ってもいい 程、ニュースや人々の話題に上るようになります。これは、サンレモ音 楽祭が行われているから。この時期にサンレモと言えば、自動的にこの 音楽祭を指すのです。

古くから花の街として知られるサンレモですが、1946年に、この街 で生花業を営むランバルディという男性が、戦後の街の経済復興とイメ ージアップを計って提唱した音楽祭が、1951年になってこの街にあ るカジノとイタリア国営放送局(RAI)によって実現されたのが、サ ンレモ音楽祭の歴史。当初、カジノで行われていた音楽祭は、その後に なってアリストン劇場に場所を移しました。58年には、イタリア音楽 史を変えたといわれる、日本でもお馴染みの曲”Nel blu dipinto di blu” (ヴォラーレ...という節でお馴染みかと思います)が大賞を取ってい ます。イタリア音楽を語るには、無くてはならない存在であるこのサン レモ音楽祭、今年で50周年を迎えました。

新人賞部門と大賞部門とに分かれ、今年の場合は新人18人、大賞16 人のノミネートの中から栄えある受賞者が選ばれるのですが、一晩のみ の放送である日本の年末に行われる音楽賞番組と比べ、五晩もかけて行 われるのです。これ程放送時間が長いのは、ノミネート曲の演奏の他に、 毎晩イタリア人歌手や外国人歌手を招いてちょっとしたミニコンサート を行ったり、チャリティー番組を兼ねているから。ちなみに、今年はス ティングが招待されています。

メイン司会者は、今年で2年目となる日曜お昼のサッカー番組の司会と して有名な男性。そのアシスタントとしては、なぜか毎年、外国人女性 が選ばれるのです。今年はスペイン人。去年はフランス人でした。イタ リアを代表する音楽祭に、なぜイタリア人女性が選ばれないのがちょっ と疑問です。通常はペアの司会で執り行われるのですが、今年は50周 年&2000年記念で、司会者も2倍の4人。テノール歌手のルチアー ノ・パバロッティも司会者の1人として参加して、もちろん、彼の美声 を聞くという趣向も取り入れられています。

第1回からイタリア国営放送(RAI)が独占放送権を握っているので すが、毎年、中継は夜の音楽祭の時間帯のみにも関わらず、どうも話題 を引っ張っている傾向があるようです。日中のRAIの番組では、司会 者やアシスタントの衣装の批判や、街中でのインタビューを放送してい て、少ししつこい位。ただ、このサンレモ音楽祭、芸能だけでなく政治 的な話題も提供していて、初日にゲストとして招かれたとある若手有名 歌手が現在のイタリア総理大臣に対し、発展途上国への貸付け金に関す るメッセージをラップにして歌ってみたり。この歌手、翌日には国会に 招かれて直接総理大臣と面談しているのです。もう直ぐ行われる選挙を 意識してのパフォーマンスだと解釈され、野党側はこれを批判していま す。とにかく、この時期は、国営・民営に関わらずテレビやラジオの話 題はサンレモ、サンレモ。

ただし、最近は若い人達にはどうも人気がないようです。サンレモ音楽 祭より、夏におこなわれる”festivalbar”という音楽祭の方が人気があり、 CDの売れ行きもいいとか。それでも、年末ではないけれど、知名度と しては日本のレコード大賞に値するがサンレモ音楽祭。今年は誰が大賞 を受賞するのでしょうか。